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ssh1029 中耳炎と抗生物質と「みんな同じ」幻想(4) [三題噺]

 小6か中1くらいのころ、伯父宅にあった『科学パズル』なる本に、こんな問題が載ってました。

◆◆◆  ある人が、次のような相談をしてきました。  「私には、赤色と青色が反対に見えているような気がして仕方がありません。例えば郵便ポストは赤いのですが、私の目には、どうしても他の人のいう青色に映っているような気がするのです。しかし私がポストの絵をクレヨンで書くとします。すると私はポストと同じ色として自分の目に映っているクレヨン、すなわち赤色のクレヨンを選んで絵を描きます。私の目に青色に映っていたとしても、出来上がるポストの絵は赤く塗られるため、何の違いもおきません。また、私はポストの色を赤色、空の色を青色と教えられてきていますから、言葉の上でも私は他人とまったく同じで正常ということになってしまいます。  果たして私の目に写っている赤色と青色は、本当に他の人たちの目に映っている赤色や青色とは違わないのでしょうか。」  この人の言っていることを確認する方法はあるでしょうか?◆◆◆
 この問題、私には大変衝撃的なものでした。
 正解は「確認のしようがないし、する必要もない」というものでした。
 要するに、この人は社会生活上何の問題も起こさないのです。
 仮にこの人の目に本当に赤と青がまったく逆に写っていたとしても、何のトラブルもありません。

 しかし、これは裏返すと、私の目に映っている色と、他人の目に映っている色が、まったく同じという保証は、どこにもないということでもあります。

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ssh1028 中耳炎と抗生物質と「みんな同じ」幻想(3) [三題噺]

 私、昨年(注:2007年)の秋に、ヘリコバクターピロリことピロリ菌への感染が明らかになりまして、除菌治療というのを行いました。この時処方されたのがランサップ800というもので、2種類の抗生剤と1種類の胃薬がセットになった、なかなかにご大層な代物でした。これを1日2回、1週間連続で服用します。わー大変。
 除菌というと洗剤か消臭剤みたいですが、体内の菌を除菌するというのはそんな生易しいものじゃありません。1匹でも残っていれば、菌は再び増殖します。
 除菌するには、皆殺しあるのみ。中途半端な攻撃は禁物、集中砲火を切れ目なく立て続けに浴びせて、1匹残らず確実にトドメをさします。
 ランサップ800が2種類の抗生剤を用いるのは、全滅させるための集中砲火です。1種類では死なないしぶとい菌も、2種類同時攻撃には耐えられません。1週間連続服用するのは、切れ目なく立て続けに攻撃して、息を吹き返すヒマを与えないためでしょう。

 私の除菌治療にあたって、担当医が私に注意したのが、絶対に勝手に服用をやめたり回数や量を減らしたりしないということでした。

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ssh1027 中耳炎と抗生物質と「みんな同じ」幻想(2) [三題噺]

 抗生物質の実用化で、内科治療は革命的な進歩を遂げました。しかし、敵もさるもの。細菌の方も黙ってやられてはくれませんでした。
 害虫やネズミの駆除に殺虫剤や殺鼠剤をよく使いますが、それで相手が全滅するわけではありません。
クスリを食らっても生き残るタフな個体が少々います。
 その少々は、その子孫を作ります。タフな個体の遺伝子を受け継ぐ、タフな子孫です。こいつらは、ちっとやそっとのクスリではくたばりません。仕方なくもっと強い殺虫剤や殺鼠剤を使います。
 それでも、特にタフなヤツは生き残ります。その生き残りがタフな子孫を作って、と、イタチごっこになることもあります。強い農薬は弊害も多いですから、やたらとクスリばかりばらまいてもよくないことになります。

 抗生物質と細菌の関係は、上の例とは少々違うのですが、リクツは上の例みたいなものです。つまり、抗生物質が多用されるうちに、抗生物質に耐性を持つ菌が出てきてしまった。いわゆる耐性菌です。

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ssh1026 中耳炎と抗生物質と「みんな同じ」幻想(1) [三題噺]

<ssh181〜4の連続記事加筆&再録> *初出2008年
 みなさん、カゼをひいた時、余計な症状を併発しませんか?
 私の場合、わりとよく中耳炎か副鼻腔炎になります。
 そうなると、抗生剤(抗生物質)で治療することになります。

 中耳炎とか副鼻腔炎(ちくのう)とか聞いて、「わ〜怖い!」と思う人は少数でしょうね。どちらも現代の先進国に暮らしている分には、大した病気じゃありません。町医者にかかってクスリをもらえば数日で回復します。
 しかし、かつては本当に怖い病気でした。 この日本でも、戦前は年間十万人以上の人が中耳炎で命を失っていました。中耳の炎症が悪化して、脳炎を起こしてしまって。
 当時、中耳炎を確実に治療する方法はありませんでした。中耳炎に限らず、体内に細菌が入って起こす炎症というのは、お手上げだったのです。

 体外なら、細菌を殺すことは難しくありません。加熱なり乾燥なり消毒薬なり、いろんな手があります。しかし、体内ではそうはいかない。当時の医療では、患者を痛めることなく体内の細菌を殺す方法はありませんでした。栄養を取って静養して、自然回復を祈るくらいしかできなかったわけです。
 ったって、貧しい人なら栄養も静養もムリでしょうし、ましてや子どもだったら、もうお祈りするくらいしかなかったでしょう。

 カゼは万病のもと、とよく言われます。カゼをこじらせて命を落とすというとき、すぐに思い浮かぶのは肺炎です。これは今でも怖い。特に乳幼児。
 しかし、それ以外にも、かなりの人が中耳炎のような感染症で亡くなっていたものと思われます。副鼻腔炎についてはよく調べてないのですが、たぶん悪化すれば命に関わったものと思われます。何せ首から上の感染症ですから。

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